【書評】『ドラゴン桜2』は信じるな
『ドラゴン桜2』は初代ドラゴン桜とは別物
かつて00年代に受験界にインパクトを与えた初代『ドラゴン桜』とは別物と考えていいだろう。
初代『ドラゴン桜』は「バカとブスこそ東大へ行け」と自信のない高校生を鼓舞した名作だっただけに残念だ。
理由を説明していく。
なぜ『ドラゴン桜2』では合格できないか
はっきり言って『ドラゴン桜2』はスタディサプリのPR漫画だ。
ドラゴン桜2が始まった頃はスタディサプリは勉強ツールの一つかと思ったが、単行本第3巻を読んでもまだ出てくる。
受験生のほうではなくて、スタディサプリのほうを見て作品をつくってる感が否めない。
スタディサプリを使わなくていいところまで、わざわざスタディサプリを使わせている。
スタディサプリはそんなにスゴいのだろうか?
スタディサプリで東大合格ができないワケ
しかし、まだまだ実力不足である。
まず講師。東大合格をバンバン出す講師はスタディサプリにはいない。
ドラゴン桜2の3巻では、スタディサプリで初代ドラゴン桜の英語の先生の動画がスマホで見られるという場面がある。
しかし、初代ドラゴン桜の英語の先生のモデルである竹岡広信先生はスタディサプリの講師ではない。
いくらフィクションとはいえ、ミスリードだろう。
スタディサプリの合格実績は東大は81名。
東大合格なら1000人がひとつのラインである予備校業界において、まだ二桁も足りない。
集客したいのはわかるが、ドラゴン桜のブランドを使って、発展途上にあるサービスを高校生にアピールするのはいかがなものか。
初代が実績ある理論にある程度基づいていたのに、今作は単なる広告なのだろうか。
合格実績をさらに見れば、私大の合格率が異常に高い。早稲田1,144名とある。
これは東大合格81名に対して、比率が明らかにいびつだ。
駿台は東大1,400名に対して、早稲田3,997人だし、
河合塾は東大1,305名に対して、早稲田5,864人。
この数字を見たら、「スタディサプリは東大対策に不向きである」と結論付けられるのだ。
戦略思考でないドラゴン桜2
科目数が多い東大受験では、効率的に対策することが必要。
したがって、無駄なことや非効率なことをやったら落ちる。
ドラゴン桜2の第3巻では、教え合うことと自分の説明をムービーに撮ることを勧めている。
はっきり言うが、無駄で非効率だ。
教え合うというと微笑ましい感じがするが、元来ペーパーテストというのは一人で解くものだ。
一般に人に教えることや録音録画することで理解が深まることもある。
しかし、ペーパーテストにおいてはアウトプットの練習は模試のほうが遥かに効率的だ。
数学の問題を一問だれかに教えている間に、ほかの東大受験生は同じ時間で3問も問題演習できるだろう。
この効率の差が積み重なれば、演習不足で不合格するのが目に見えている。
残念ながら、時間が限られている大学受験では、効率の面では教え合うことやムービーに撮ることは非効率なのだ。
英文法は説明できなくてもいい
ドラゴン桜2の第3巻は、生徒に英文法の説明ができるようになるまで理解させようとしてる。
笑止千万。非効率的すぎる。
頭の悪い教師が好きそうなネタだ。
教えるのって大変だろうと生徒に同情してほしいのか?
英文法は説明できなくてよい。用語も覚えなくてよい。
英語は使えればよいのだから。受験では正解できればいい。
アメリカ人は関係代名詞なんてわかって英語は使ってないだろう。
『ドラゴン桜2』はスタディサプリのPR漫画
最近の高校生は冷めていて熱血的に教えても響かないという前提で話が進んでいる。
そして、今回はそこそこできる生徒が東大を目指している。
これは、スタディサプリがターゲットとしている層で、そこそこ頑張れば早慶やMARCHのどこかには受かる人に受けさせて実績を積む作戦だ。
重ねていうが、初代ドラゴン桜が素晴らしく、今でも読む価値がある作品だ。
しかし、ドラゴン桜2は、東大に合格したい人は、決して鵜呑みにしてはいけない。
4巻以降の続編レビュー記事はこちらです。